小説89
2008年 07月 25日
嶋村美貴から連絡があったのは、それから数日後の金曜日の朝だった。ぼくは寝ぼけたままだったのだが、彼女の声を聞いて一気に目が覚めた。「近いうちに会えないかな」という彼女に対して、ぼくはすぐにスケジュール帳を確認し、次のバイトがオフの日を数日告げ(それは、翌々日の日曜と、来週の火曜、そして木曜だった)、だったら日曜日がいいという彼女にオーケイと即答し、時間と待ち合わせ場所を決めて電話を切り、忘れてしまわないようスケジュール帳にそれを書き込んだ。そしてシャワーを浴びようと洗面所に行ってふと鏡を見たとき、寝ぼけながらもなんだかにやついたようなぼくの顔が映っていた。それを見たとたんひどい自己嫌悪が襲ってきた。豊田瀬梨香の存在を知られることにより鮎川優菜と疎遠となり、その豊田瀬梨香は豊田香穂里となってしまった。そんな寂しさを嶋村美貴の存在でごまかそうとしているようで、ひどく気分が悪くなった。
by ktaro1414
| 2008-07-25 12:49
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