小説83

「何でかい声出してんだよ」
アイドルがぼくに向かって怒鳴ったが、そんなことはどうでも良かったし、実際ぼくの耳には届いていなかったように思う。
「失礼します」
それだけ言って、ぼくがVIPルームを飛びだそうとしたその時、堀口がドスのきいた声で「待て」とぼくを呼び止めた。ぼくは思わず振り返っていた。
「まあ、待て」
もう一度そう言ったあと、“銀座”に何かささやきながら紙切れのようなものを渡し、“銀座”がそれを持ってぼくの方へ近寄ってきてそれをぼくの前に差し出した。
「オレの連絡先だ。何かあったら連絡していい。車の方でも構わんよ」
ぼくはそれを流れで受け取り、堀口に向かってもう一度「失礼します」とだけ言ってその場所を離れた。エントランスへの階段を駆け上がり、「どうなった?」と訊くタカシをほとんど無視してヘルメットをロックからはずしてかぶった。そうしてバイクに跨ろうとしたとき、豊田瀬梨香、いや香穂里が息を切らして駆け寄ってきた。
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by ktaro1414 | 2008-05-30 11:36 | STORY