小説77

「彼女は瀬梨香ですよ。豊田瀬梨香。変な名前ですけどね。最初は嘘だと思いましたよ。」ぼくの頭は少しずつ混乱し始めていた。
「ああ、本名はな。でもこの世界では豊田カオリだよ。知らなかったのか?」
豊田カオリ?瀬梨香じゃなくて?ぼくの混乱は一気にアクセルを踏み込んだように加速していった。
「本名?じゃあ彼女は芸能人なんですか?」
「本気で言っているのか」その時、株成金いや堀口は初めてぼくの目を見た。「本当みたいだな。そうか、そんなことも知らずにカオリとつきあっていたのか」
「別につきあってなんかいませんよ」
そう言って、ぼくは次を待った。堀口は空になったグラスをスタッフの方に向けて、おかわりを催促した。ぼくは苛つきを押さえて次の言葉を待っていた。新しいグラスが運んでこられ、それに少し口を付けた後、ようやく堀口が口を開いた。
「小説家だよ、カオリは。」
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by ktaro1414 | 2008-04-22 08:36 | STORY