小説76

思わず声が大きくなっていたらしい。それぞれ会話していた新ドラマメンバーが一斉にぼくに顔を向けた。しかし、すぐに元の状態に戻っていった。株成金は何も言わなかった。無視するつもりかと思い、もう一度息を吸い込んで同じ言葉を言おうとしたときだった。
「オレが会いたいと思ったんだよ、あんたに。カオリが気に入って小説の題材にまですることにした男がどんな奴か知りたくてね。」かおり?小説家の本当の名前はカオリというらしい。もちろん“池袋”などという名前であるはずはない。当然だ。しかしぼくは“池袋”にもカオリにも会ったことはない。
「ぼくは会ったことありませんけどね、彼女には。」
「そんなわけはない。つまらん嘘をつくね、あんたは。」相変わらず株成金はこっちを見ない。
「ぼくがあなたに嘘をつく必要なんか全くありませんね。」少しだけ苛立ちながらぼくは言った。「あの人に会ったのは今日が初めてです。」そう言ってぼくは“池袋”の方に顔を向けた。
「何を言っているんだ。カオリはこっちだろ。」株成金が顔を向けたのは豊田瀬梨香の方だった。
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by ktaro1414 | 2008-04-15 12:43 | STORY