小説57

「どうしたんですか?」
少し驚いたぼくに、彼女の方が大げさに驚いてみせて言った。
「それはこっちの台詞でしょう。何度来ても店にはいないし、電話は留守電になってるし、どうしようもなくて店の人に訊いたら2ヵ月休んでるって言うじゃない。2ヵ月っていったらそろそろかなと思って来てみたらあなたのバイクが止めてあったってわけ。どうして私服なの?」そこまで一気に話した後、彼女が訊いてきた。
「バイトは明日からなんですよ。今日は挨拶に来ただけ。」そう言ってぼくはヘルメットをかぶろうとした。
「2ヵ月もどこで何してたのよ?まあいいわ。ご飯食べに行きましょ。詳しい話はそのときに訊くわ。」
そういって彼女は大通りへと歩き出した。たぶんタクシーを拾うつもりだろう。相変わらず強引だ。
「ダメですよ。ぼくはバイクなんだから。」
そういうぼくを見ながら彼女は言った。まるで手が焼けるこどもを見るように。
「置いていけばいいでしょ、いつものように。」
ふうっとぼくは息を吐いてヘルメットをバイクにつけ、彼女の後に続いた。
[PR]
by ktaro1414 | 2007-06-29 12:40 | STORY