小説53

 結局バーを出たのは午後11時過ぎになった。当然電車はまだ動いている時間だが、ぼくはタクシーを探していた。鮎川が完全に酔ってしまい、とてもひとりで歩ける状態ではなくなってしまったからだ。(これじゃ、この間と同じ事の繰り返しじゃないか)ぼくは心の中でつぶやいた。ようやく捕まえたタクシーに何とか彼女を乗せ、あからさまに嫌な顔をする運転手に新井薬師の住所を告げた。「吐かないでくださいよ。」そう嫌みを言いながら車を走らせる運転手をぼくは無視した。鮎川は少しだけ顔をゆがめ、頭をぼくの肩に預けていた。
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by ktaro1414 | 2007-06-14 12:22 | STORY