小説18

 ようやく洗濯を終えたぼくは、まだ少し早かったが他にすることもなかったのでバイトに向かうことにし、ヘルメットをかぶり、バイクに跨って青梅街道を東へと走った。ぼくのバイト先は有明にあり、海に面した昔の古い倉庫を改造したディスコだ。ぼくはそこで黒い服に身を包まれ、頭にはヘッドセットをはめて、入口(そこで働いているスタッフはエントランスと呼んでいる)に立って客を迎え入れるのである。
 もちろんぼくはディスコなどで働きたくはなかったのだが、ある日このディスコで働いているゼミの先輩が「急に人が辞めて困ってるのでおまえバイトしないか?」とぼくに話を持ちかけてきた。ぼくはディスコで踊ったこともなくあまり気乗りはしなかったが、前の居酒屋のバイトがなくなり(店がつぶれてしまった)、条件もかなり良いものだったので「まあ、どうせ落とされるだろう」という軽い気持ちで面接を受け、そのまま採用となってしまったのだ。
店のスタートは午後六時だが、八時近くになるまであまり客は現れない。忙しい時間帯を迎えるまでに、ぼくは数組の客を迎え、「何名様ですか?」と客の人数を確かめ、ヘッドセットを通してその人数と性別をフロアスタッフに伝え、どこから見ても高校生と判る三人の女の子を丁重にお断りし、そして何組かの常連客と短い会話を交わした。
 午後九時をすぎた頃、OL風の女性客三人がこちらに向かって歩いてきた。ぼくはいつものように人数を確認した。
「3名様ですか?」
「そうよ。」
見覚えのある女がぼくに答えた。
「女性のお客様、三名様入られます。」
そうフロアスタッフに伝えながら三人を店内へと誘導していると、先ほどの女がぼくの耳元でささやいた。
「今日、何時上がりなの?」
こういう格好でこういう仕事をしていると、ぼくのような人間でも興味を持つ女がいるということを、ぼくはここで働くようになって初めて知った。つまり、お気に入りのスタッフの上がり時間を確認することで、仕事の後の誘いをしているのだ。ぼくですら二、三日に一度こういう事があり、多いスタッフだと毎日十人ぐらいから誘われるらしい。先輩の話によると、その中から一番自分の好みの女の子を選び、仕事が終わった後二人で遊びに行くのがルーティン・スケジュールだということだ。
「早番ですから一時くらいですかね。でも忙しい場合はわかりません。」
ぼくはそう告げて再び入口へと戻った。
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by ktaro1414 | 2006-11-07 18:47 | STORY