忘れた頃に、突然更新


by ktaro1414
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小説68

 それから数日間があっという間に過ぎた。その間、キャンパスで鮎川優菜と会うこともなかった。ぼくは心の中でたぶん彼女にバッタリと会うことを期待し、そして弁解する機会を欲していたのだと思う。しかし、ぼくは彼女の彼氏ではないし、もちろん彼女がぼくの恋人であるわけはなく、言い訳をする必要もなければ、言い訳のしようもないことははっきりしていた。それでもぼくはその機会を待っていた。要するに、ぼくは彼女に会いたかったのだ(たとえそれがどんなに身勝手なことだとわかっていても)。ぼくは出来るだけ何も考えないようにし、バイト中は来るお客様のことだけを考え、講義中は作詞に集中し、出来るだけ一生懸命に食事を食べ、友人といるときはなるだけ楽しい話題を探して、風呂に入っているときは意味もなく数を数えたりした。それでも何かの拍子に鮎川優菜の顔が浮かぶと、あの日あそこに泊まったことを悔やんだり、あの日の二人に祝福なんか送るんじゃなかったなどと意味のないことを考えたりした。
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# by ktaro1414 | 2007-10-22 18:15 | STORY

小説67

「逃げなくったっていいでしょ」そう言って早足でぼくの横に並んできた。
「逃げてなんかないよ。逃げる理由なんかないだろ」そう言いながらもぼくの足は無意識に速くなっていた。
「今から昼飯喰うんだ、学食で」
「大丈夫よ、一緒に食べようなんて言わないから」
胸がちくりと痛んだ。ぼくは頭のどこかでこれから一緒に学食で昼食を取り、その間ずーっとこの件について責められることをある意味期待していたのかもしれない。しかし、こんなぼくとはもう一緒に食事なんかしたくないという、彼女の意思表示だと思えた。
「怒ってるの?」ぼくは思わずそう口にしていた。
「怒ってる?私が?どうして?」そう言って彼女の足が止まった。「でも、怒られるかもしれないと思うようなことはやったって事ね」
ぼくは、何も言えなかった。でも、そんなことは関係ないというように彼女は続けた。
「それはそうよね。あんな昼下がりの時間に寝癖のついた頭で部屋から出てきて、女の人といちゃいちゃしてるくらいだから」
絶句した。彼女はぼくたちをちらっと見かけたのではなく、あの日のロビーでのやりとり、その一部始終を見ていたのだ。
「どうして・・・」
ぼくは言葉がつなげなかった。
「まあ、関係ないでしょうけど。あの日、私の従姉妹の結婚式だったの。あのホテルで」
それだけ言って、彼女は足早にぼくのもとから去っていった。
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# by ktaro1414 | 2007-10-17 19:42 | STORY

小説66

 翌週の火曜日、午前中の講義が終わったぼくは、昼食を取ろうと学食に向かっていた。
「矢口君」そう声をかけられ、振り向くと鮎川優菜が小走りでこちらに向かってきていた。
(矢口君?)ぼくは何となく居心地の悪さを感じずにはいられなかった。
「お昼?」彼女は、ぼくの横に並びながらそう言った後、少し間をおいてぼくの顔をのぞき込むようにしてこう続けた。
「ねえ、キミこの間の土曜日アークヒルズのホテルに泊まってたでしょ?」
ぼくの思考回路が一旦急停止し、それからものすごいスピードで回転し始めた。
「どうして?」
どう答えていいかわからず、ぼくにはそう言うのが精一杯だった。どうして彼女がそのことを知っているのか理由がわからなかった。
「あんな高級なところによく泊まったり出来るわね」
笑顔でそう言う彼女の目は笑ってなく、ぼくは焦っている自分をこのときはっきりと自覚できた。
「そんなに高級なのかな、あのホテル」
ぼくはそう言って歩き始めた。顔を見られるのが怖かった。
「あの女の人が払ったんでしょ。大人だし、お金持ちそうだったし」
見られたのだ。その時やっとぼくの頭の中で整理ができた。いや、たぶん最初からそうだろうと思いながら、それを認めるのが怖かったのだ。
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# by ktaro1414 | 2007-10-12 12:28 | STORY

小説65

「この姿だから帰りますよ」そう言ったぼくの頭をのぞき込むように見た彼女は手に持っていたバッグを腕にかけ、少し背伸びをするようにしてぼくの後頭部に両腕を回して寝癖を直す仕草をした。見る角度によっては、まるで白昼のホテルのロビーでキスをしているように見えたかもしれない。ぼくは慌てて彼女の腕をとった。
「やめてくださいよ、人が見てるかもしれないじゃないですか」
そう言うぼくの顔を笑顔でみつめながら、彼女はそのしぐさをやめようとはしなかった。
「意外とこういうところでは、人は他人のことなんか見てないのよ」そう言いながらくすっと笑った。
「じゃあ、そこのラウンジでコーヒーだけ飲んで行こ」そう言って、いつものように一人で歩き出していた。そして、ぼくも仕方なくいつものように後を追った。
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# by ktaro1414 | 2007-10-05 12:40

小説64

「ちょっと待っててね。」
チェックアウトをすませた彼女は、そう言って公衆電話の並ぶ場所へと向かって行った。たぶんこれから会うという人間に連絡を入れるのだろう。ぼくはその間、柱にもたれかかりながら、人が行き交うロビーの様子を眺めていた。結婚式があるらしく、振り袖やドレスで着飾った女性たちの姿が目立った。外は快晴だ。今日祝いの日を迎える見知らぬ二人に、ぼくは心の中で祝福を送った。
「よかった」そう言って戻ってきた彼女は再びぼくの腕に自分の腕を絡ませてきた。「むこうも急な打合せが入って時間をずらしたかったんだって。だから、少し時間が出来たの。おなか空いてない?何か食べていこうか?」
たしかに腹ぺこだった。しかし、この寝癖のついた頭でどこにも行きたくはなく、出来ればこのまま一刻も早く自分の部屋に戻りたかった。
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# by ktaro1414 | 2007-09-19 12:44 | STORY

小説63

 再びぼくが目を覚ましたのは豊田瀬梨香に肩を揺すられたからだった。
「ねえ、起きて。」
そう言われてぼくは起きあがった。彼女を見るとすでに着替えており、簡単にメイクもされていた。時計を見るとまもなく午後1時になろうとしているところだった。
「すみません、気づかなかった」
「私もなの。この後私、人と約束があるのよ。悪いけど急いでもらえる?」
ぼくはあわてて洗面所に行き顔を洗って歯を磨いた。鏡には寝ぼけ顔で、寝癖のついた二日酔いの男の顔があった。冴えねーな、そう心の中でつぶやきながらぼくは簡単に身支度をした。彼女の様子から見て、どうもシャワーを浴びている時間はなさそうだった。寝癖がついているけれど仕方がない。
 ぼくたちは、部屋を出てエレベーターに乗った。エレベーターには僕たち以外に誰も乗っていなかった。
「ごめんね、ばたばたになっちゃって」
そう言って彼女はぼくの腕に自分の腕を絡めてきた。そのままロビーに降りたぼくたちは、チェックアウトのためフロントへと行き、彼女がいつものようにチャックアウトを済ませた。
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# by ktaro1414 | 2007-09-11 18:23 | STORY

いいわけ

えーっと、8月は何かと忙しくって・・・

更新できませんでした。
数少ない読者の皆様、すみません。

そろそろ更新します。
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# by ktaro1414 | 2007-09-07 12:40 | その他

小説62

 朝、目が覚めると横には素顔の豊田瀬梨香が寝ていた。ふと時計を見るとまもなく11時になろうとしており、ぼくはあわてて彼女の肩を揺すった。
「やばい、もうすぐ11時ですよ」
このところ、豊田瀬梨香とこういうホテル、いわゆるシティホテルというものに身分不相応にも泊まることが多く(もちろん寝るだけではない)、そういったホテルのチャックアウトが概ね11時だという事がこんなぼくにもわかってきていたのだ。
「んー・・・」そう言って、眠たげな目を少しだけ開けた豊田瀬梨香がこれまた眠そうに言った。
「チェックインの時にレイトにしてもらってるからいいのよ」
レイトってなんだ?ぼくは訳がわからずもう一度言った。
「11時ですよ。チェックアウトしないと」
「だからぁ、レイトにしてるから1時までいいのよ。もう少し寝よ。昨日は少し飲み過ぎたわ」
そう言ってぼくに背を向け、再び眠りについたようだった。はっきりとは理解できなかったが、とにかく1時でいいと言っているので、ぼくももう一度眠りにつくことにした。ぼくもやはり飲み過ぎたようだ。
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# by ktaro1414 | 2007-07-30 20:12 | STORY

小説61

「ぼくの影響力?そんなものほとんどありませんよ。全くと言ってもいいかも」
「だから、そういうところよ」
そこで寿司が運ばれてきて、自然と会話が途切れた。
「まあいいわ。今日のところは許してあげる。さ、食べよ」
そう言って彼女はいきなりウニの軍艦巻きをほおばった。何となく釈然としないまま、ぼくは鉄火巻きに手を伸ばした。
 特上のにぎりを一人前ずつと、ビール中瓶2本、そして二合徳利3本があっという間に無くなっていた。
「この後、上のバーで飲んでいこ。そして、ここに泊まるの。ね、いいでしょ?」
ぼくは、まだ先ほどの会話を消化し切れて無く、なんとなく返事をしづらかった。
「なに?不満でもあるの?あした学校?」
「明日は休みですよ、土曜日だから」
「あ、明日は土曜日か。じゃあいいじゃない。さ、行こう」
そう言って、さっさと勘定を済ませてエレベーターへと彼女は向かっていった。相変わらず曜日感覚のない人だと思いながら、仕方なくボクは彼女の後に続いた。
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# by ktaro1414 | 2007-07-23 19:07 | STORY

小説60

「怒るわよ。なんにも連絡してこないままいなくなっちゃうなんて。バイトならいつもやってるじゃないの。どうして岐阜なんか・・・」
なんだか、誰かと同じようなこと言うなと思いながらも、ぼくはどうして岐阜にまで行ってバイトをしなければならなかったかを彼女に説明した。そう、あの日、鮎川優菜に説明したときのように。
「なるほどね、理由はわかったわ。でもそれと、なんの連絡も無しにいなくなったこととは別でしょ。」
「それは悪かったと思いますよ。でも、それくらいで心配するひとがいるなんて思ってもなかったから。」
ふうっ、と彼女はため息をつくように息を吐き、しばらくぼくの顔を見つめたあとにこう言った。
「あなたはね、もう少し人のことを考えた方がいいわよ。自己中心的だとは言わないけど。っていうよりも、もう少し自分自身の他の人に対する影響力ってものを考えた方がいいって言うべきかしら。」
ぼくは少し驚いて彼女の顔を見た。
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# by ktaro1414 | 2007-07-11 18:38 | STORY