忘れた頃に、突然更新


by ktaro1414
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

<   2008年 05月 ( 6 )   > この月の画像一覧

あ 

今日、誕生日です。
ゴミゼロの日。
[PR]
by ktaro1414 | 2008-05-30 12:58 | その他

小説83

「何でかい声出してんだよ」
アイドルがぼくに向かって怒鳴ったが、そんなことはどうでも良かったし、実際ぼくの耳には届いていなかったように思う。
「失礼します」
それだけ言って、ぼくがVIPルームを飛びだそうとしたその時、堀口がドスのきいた声で「待て」とぼくを呼び止めた。ぼくは思わず振り返っていた。
「まあ、待て」
もう一度そう言ったあと、“銀座”に何かささやきながら紙切れのようなものを渡し、“銀座”がそれを持ってぼくの方へ近寄ってきてそれをぼくの前に差し出した。
「オレの連絡先だ。何かあったら連絡していい。車の方でも構わんよ」
ぼくはそれを流れで受け取り、堀口に向かってもう一度「失礼します」とだけ言ってその場所を離れた。エントランスへの階段を駆け上がり、「どうなった?」と訊くタカシをほとんど無視してヘルメットをロックからはずしてかぶった。そうしてバイクに跨ろうとしたとき、豊田瀬梨香、いや香穂里が息を切らして駆け寄ってきた。
[PR]
by ktaro1414 | 2008-05-30 11:36 | STORY

小説82

「ただ、」スタッフがもってきた新しいグラスを“銀座”から受け取りながら、堀口は続けた。「ざっくりとした話では、都内の大学に通っている大学生、ディスコで働いていて、バイクに乗っている。それと、そのバイクの事故で昔彼女が亡くなった。彼女の故意による事故が原因だった。あんたのことじゃないのか?」
一瞬、辺りの音が全て消えた。もちろん、実際に消えたわけではないのだろうけど。すーっと、血の気が引いていき、その何倍もの勢いで頭に血が上ってきた。どうしようのない怒りがコントロール不可能な程のスピードで膨らんで、そしてはじけた。
「ばかげてるっ」
辺りの風景が一瞬ストップモーションのように止まった。VIPルームのソファに腰掛けた全ての人間がぼくの方を見ていた。もちろん、豊田香穂里も。ぼくは、思わず立ち上がっていた。両の拳は痛い程に握りしめられて、爪が手のひらに食い込む程だった。
[PR]
by ktaro1414 | 2008-05-26 12:01 | STORY

小説81

「それはそうでしょう。ぼくは特別、特徴のある人間ではないし、なんてことない大学生活を送っているだけですからね。こんなぼくを題材にするなんて信じられませんね」
「信じる信じないは関係ない。オレはそのように香穂里から聞いていて、その男に興味を持った。ただそれだけだ」
突き放すような言い方が少しだけ気に障ったが、それでもぼくは質問を続けた。訊かなければならないことがたくさんあるようで、何を訊けばいいのかがわからなかったけれど。
「じゃあ、教えてもらえますか。ぼくの何が題材になっているのか」
「詳しいことは知らんよ。小説といってもこの映画のためのものだから、シナリオとやらと同時進行らしい。ま、それ以上のことはわからん。オレはただの株屋だからな」そう言って、またグラスをスタッフの方へと掲げ、おかわりを催促した。その様子を見ながら、かなり酒が強いんだな、などと関係ないことを思ったりしていた。
[PR]
by ktaro1414 | 2008-05-20 12:58 | STORY

小説80

「香穂里と書いてカオリと読むんだ。名前なんだからどう読ませても構わんということだろう。」と、珍しく堀口はすぐに返事を寄こしてきた。そんなことはどうでもいい。もっと大事な何かを訊かなければいけないはずだ。そうだ、堀口は「オレが会いたいと思った」と言った。そして、「香穂里が気に入って小説の題材にした男」とも。つまり、その男がぼくだと言うことなのだろうか。
「ぼくを題材にして彼女が小説を書いたというんですか?」
堀口は遠い記憶を探るように少しだけ目を細め、ゆっくりとぼくを見た。
「そのようだな。もちろん、あんたのことをそのまま書いたわけではないだろうがね」
ぼくは、先ほど“銀座”が言っていた言葉を思い出した。アイドルが主人公の恋人役で、大学生の設定だということだった。つまり、あのアイドルが演じるのがぼくだというのか。
[PR]
by ktaro1414 | 2008-05-13 08:45 | STORY

小説79

「すみませんね、本はあまり読まないんです。ついでに教えてもらえませんかね。カオリってどう書くのか」
その時、“銀座”がぼくの前に新しいグラスを置いた。いつの間にかぼくは、ジントニックを飲み干していたらしい。新しくつくられたジントニックを少しだけ口にした後、ぼくは自分を落ち着かすために軽く深呼吸をした。その様子を見ていたのか、堀口が「そんなに興奮するなよ」と言ってたばこをくわえ、そこに“銀座”がすっとライターを差し出して火をつけた。ふと横を見ると“敏腕”の向こうから豊田瀬梨香(豊田カオリと言うべきか)が心配そうにこちらの様子を窺っていた。
「香水の『香』に、稲穂の『穂』、それにふる里の『里』だ」たいしておもしろくもなさそうに、そう堀口が言った。やはりこちらを向くことなく、誰に対して言っているのかがわからない様な感じのままで。
「カオリではなく、カホリなんですか?」そう訊いてしまった後で、そんなことよりも大事なことがあるはずなのにと少しだけ後悔した。
[PR]
by ktaro1414 | 2008-05-07 08:36 | STORY