忘れた頃に、突然更新


by ktaro1414
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小説71

「映画会社で働いてるのかな。」ぼくは、誰に言うともなくそうつぶやいていた。タカシがオマエ何ぶつぶつ言ってんだよ、というような目でぼくを見ていたが特に何も言わなかった。
 午前0時も近くなりそろそろ上がりだなと思っていたとき、ぼくのヘッドセットに香月が呼びかけてきた。
「悪いが、オマエ今からVIPルームに行ってくれ。」
「ぼくはフロアじゃありませんよ。それにそろそろ上がりの時間です。」ぼくにVIPルームで何をしろというんだ。
「いいから行ってくれ。残業は付けておくから。お客様がお呼びなんだよ。いいな。」それだけ言って香月のヘッドセットのスウィッチは切られた。客が呼んでる?誰が?豊田瀬梨香か?まあそうだろう。それ以外にぼくを知っているやつはいない。あるいはさっきのアイドルが、まだ文句を言い足りなくてぼくを呼びつけてもう一度怒鳴ってやろうと思っているのかもしれない。
「やれやれ。」ぼくは口に出して言ってみた。タカシが大変だな、という風にぼくを見た。ああ、という風にぼくもタカシを見た。「じゃあ。おつかれ。」それだけ言ってぼくは階段を下りていった。
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by ktaro1414 | 2007-11-16 12:24 | STORY

小説70

「大変失礼致しました。今すぐご案内致します。」香月はそう言いながらぼくの頭を押さえ無理やりにお辞儀をさせた。ぼくはひとりひとりに「いらっしゃいませ」と言って頭を下げた。最後の女性に頭を下げて顔を上げるとそれは豊田瀬梨香だった。
「ごめんなさいね。」なんだか本当に申し訳なさそうに彼女は言った。
「お久しぶりですね。いらっしゃいませ。」
「本当にごめんなさい。」
「どうしてお客様がそんなことを仰るんですか?」ぼくは香月の目を気にしながらそれだけ言って、彼女の案内を香月に任せた。香月は少しだけぼくを睨んだ後、わざとらしい笑顔を作って彼女を案内して階段を下りていった。
「なんなんだ、いったい。」戻ってきたタカシにぼくは訊ねた。
「知らないのかよ。」そう言いながらタカシが教えてくれたところによると、ぼくに向かって叫んでいたのが何とかというアイドルグループのひとりで、最近はドラマや映画にも出てかなり人気があるらしい。そして、これは香月から訊いたところによると、と言う注釈付きの情報では、恰幅が良く明らかにあの団体の中で一番偉そうに見えた男が最近兜町の風雲児などともてはやされている何処かの会社の社長で腐るほどの金を持った株成金だということ、ひとりは河田町にあるTV局の敏腕プロデューサーだということ、ひとりは数年前に有名な文学賞を取って最近ではその作品のいくつかが映画化された女流作家だということだった。ということは、その女流作家の作品をまた映画化することになり、それをそのTV局が制作することになって(であれば、たぶん映画会社の人間もあの中にいることになる)、主演か何かにあのアイドルタレントを起用して、恰幅の良い腐るほどの金を持った株成金といわれている男がそのスポンサーになり、今日はその打合せという名の飲み会、つまりそういったところだろうとぼくは見当をつけた。しかし、とぼくは思った。しかし、あの中で豊田瀬梨香の役回りは何なのだろう。ぼくには、彼女がただの取り巻きだとはとても思えなかった。もし誰かにその理由を聞かれても間違いなく答えられないだろうけど、それでもぼくはある種の確信を持ってそう思った。
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by ktaro1414 | 2007-11-02 19:05 | その他