忘れた頃に、突然更新


by ktaro1414
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小説62

 朝、目が覚めると横には素顔の豊田瀬梨香が寝ていた。ふと時計を見るとまもなく11時になろうとしており、ぼくはあわてて彼女の肩を揺すった。
「やばい、もうすぐ11時ですよ」
このところ、豊田瀬梨香とこういうホテル、いわゆるシティホテルというものに身分不相応にも泊まることが多く(もちろん寝るだけではない)、そういったホテルのチャックアウトが概ね11時だという事がこんなぼくにもわかってきていたのだ。
「んー・・・」そう言って、眠たげな目を少しだけ開けた豊田瀬梨香がこれまた眠そうに言った。
「チェックインの時にレイトにしてもらってるからいいのよ」
レイトってなんだ?ぼくは訳がわからずもう一度言った。
「11時ですよ。チェックアウトしないと」
「だからぁ、レイトにしてるから1時までいいのよ。もう少し寝よ。昨日は少し飲み過ぎたわ」
そう言ってぼくに背を向け、再び眠りについたようだった。はっきりとは理解できなかったが、とにかく1時でいいと言っているので、ぼくももう一度眠りにつくことにした。ぼくもやはり飲み過ぎたようだ。
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by ktaro1414 | 2007-07-30 20:12 | STORY

小説61

「ぼくの影響力?そんなものほとんどありませんよ。全くと言ってもいいかも」
「だから、そういうところよ」
そこで寿司が運ばれてきて、自然と会話が途切れた。
「まあいいわ。今日のところは許してあげる。さ、食べよ」
そう言って彼女はいきなりウニの軍艦巻きをほおばった。何となく釈然としないまま、ぼくは鉄火巻きに手を伸ばした。
 特上のにぎりを一人前ずつと、ビール中瓶2本、そして二合徳利3本があっという間に無くなっていた。
「この後、上のバーで飲んでいこ。そして、ここに泊まるの。ね、いいでしょ?」
ぼくは、まだ先ほどの会話を消化し切れて無く、なんとなく返事をしづらかった。
「なに?不満でもあるの?あした学校?」
「明日は休みですよ、土曜日だから」
「あ、明日は土曜日か。じゃあいいじゃない。さ、行こう」
そう言って、さっさと勘定を済ませてエレベーターへと彼女は向かっていった。相変わらず曜日感覚のない人だと思いながら、仕方なくボクは彼女の後に続いた。
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by ktaro1414 | 2007-07-23 19:07 | STORY

小説60

「怒るわよ。なんにも連絡してこないままいなくなっちゃうなんて。バイトならいつもやってるじゃないの。どうして岐阜なんか・・・」
なんだか、誰かと同じようなこと言うなと思いながらも、ぼくはどうして岐阜にまで行ってバイトをしなければならなかったかを彼女に説明した。そう、あの日、鮎川優菜に説明したときのように。
「なるほどね、理由はわかったわ。でもそれと、なんの連絡も無しにいなくなったこととは別でしょ。」
「それは悪かったと思いますよ。でも、それくらいで心配するひとがいるなんて思ってもなかったから。」
ふうっ、と彼女はため息をつくように息を吐き、しばらくぼくの顔を見つめたあとにこう言った。
「あなたはね、もう少し人のことを考えた方がいいわよ。自己中心的だとは言わないけど。っていうよりも、もう少し自分自身の他の人に対する影響力ってものを考えた方がいいって言うべきかしら。」
ぼくは少し驚いて彼女の顔を見た。
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by ktaro1414 | 2007-07-11 18:38 | STORY

小説59

 タクシーが着いたのは、またしてもホテルのエントランスだった。ぼくは、何となくぼうっとして乗っていたので、すぐにはここがどこなのかわからなかったが、やがてここが昨年オープンして話題になったアークヒルズなのだということがわかった。彼女はさっさとエレベーターに乗って3階で降りた。彼女が入っていった店は寿司屋だった。またしてもやられた、そう思った。いくらぼくが抵抗しようとしても、いつも彼女が遙かその上をいっている感じだった。
「で、なにやってたの?今まで。」
奥のテーブル席に着き(たぶん、カウンターでは話しづらいと思ったのだろう)、一通り注文をすました後、そういって彼女が口を開いた。
「バイトに行ってたんですよ。岐阜まで。」
「岐阜?どうしてバイトで岐阜になんか行かなくちゃいけないのよ。」
「なに、怒ってんですか?」
ほんとに何を怒っているのだろうと思っていた。
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by ktaro1414 | 2007-07-06 18:21 | STORY

小説58

「六本木までお願いします。」
運転手にそう告げて、彼女はタクシーのシートに深く身を沈めた。どこに行くのかと尋ねるボクに、「何処にしようかしら」とだけ言ってそのまま黙ってしまった。仕方なくぼくも黙ったまま流れる外の景色を眺めていた。その間、彼女は時折運転手に行き先を指示していた(それは相変わらずてきぱきとしていた)。ぼくはそれを聞きながら、結局行き先は決めてんじゃないか、そう心の中でつぶやいた。
「何にする?」そう言う彼女に「何がですか?」と答え、「何を食べるかってことよ。」という彼女に「決めてるんでしょ?」と返し、「どうして?」と言う彼女に「だって行き先決めてるじゃないですか。」と言い返した。
「行き先だけはね。でも、何を食べるかは決めてないわ。何がいい?」
「何でもいいですよ。まあ、出来ればフレンチとイタリアンと中華以外がいいですね。」
「そう。」それだけ言って彼女は再び黙ってしまった。少し子供じみているかとも思った。ただ、決めていると言っている場所に何があるのかわからなかったが、たいていその3種類をはずせばカジュアルな居酒屋のような店になるだろうと思ったのだ。
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by ktaro1414 | 2007-07-02 18:30 | STORY