忘れた頃に、突然更新


by ktaro1414
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小説44

 そうして、デザートの杏仁豆腐が出てきた時には、ぼくは8合分の紹興酒を、彼女は720mlの赤ワインを飲み干していた。
「ふう」彼女がため息をついた。「少し飲みすぎたみたい。キミ、強いわね、やっぱり。私お酒の強い男の人って好きなの。」
「そうでもないですよ。この酒あまり強くないみたいですから。」ぼくは彼女を見た。確かに顔がほんのりピンク色に見える。
「そんなことないわよ。紹興酒って結構アルコール度数あるんだから。」そう言いながら彼女はウェイターを呼び、精算を頼んだ。
「ぼくも払いますよ。」このホテルのグレードを考えると、ぼくには「割り勘で」という言葉は口に出来なかった。半額は間違いなく払えない。
「いいの。今日はうれしいから奢っちゃうって言ったでしょ。」彼女はウェイターの持ってきた伝票の金額を確認し、アメックスのカードを手渡して、ちょっと待っててねという風にぼくの方を見て席を立った。たぶんトイレだろうと思い、ぼくも席を立とうとして思わずよろめいてしまった。まずい、少しどころか、かなり飲み過ぎたようだ。ぼくは、もう一度椅子に腰をおろして、彼女が戻るのを待った。テーブルが、なんだか揺れているように見えた。
「ごめんなさい。少し酔ったみたい。」そう言いながら戻ってきた彼女に、
「ぼくもちょっと飲みすぎましたね。」と言って、今度は慎重に腰を上げた。それでもぼくは少しだけよろめいた。そんなぼくを見て、彼女は「ほんとね」と言って微笑んだ。
 「ねえ、提案があるんだけど・・・」彼女の顔には悪戯っぽい笑顔が浮かんでいた。「私はちょっと酔ったみたい。そして、キミも飲み過ぎて足がもつれそう。」ぼくには彼女が何を言い出そうとしているのかが、何となくわかったが、黙って彼女の言葉を待った。「タクシーでキミをお家まで送って、それから私のお家まで帰るのもなんだか面倒くさい、そう思わない。」ここでもう一度彼女は微笑んだ。「だから、ここにふたりで泊まっちゃおう。」
思った通りだ。
「いいですね。悪くない。グッドアイデアだと思います。でも、部屋が空いてるとは限りませんよ。」思った以上にぼくは酔っているのかもしれない。
「じゃあ、空いてなかったら帰る。空いていたら泊まる、ってことでどう?」
「いいですよ。そのかわり、空いてなかった場合の帰りのタクシー代はぼくが払います。」
「いいわ。」
1時間後、このホテルの1208号室で、ぼくと豊田瀬梨香は初めてセックスをした。
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by ktaro1414 | 2007-03-23 18:38 | STORY

小説43

 出てきた紹興酒は、中国風のとっくりのようなものに入れられて、燗が付けられていた。2合は入りそうな容器だ。それを、お猪口のようなグラスに注いで飲むらしい。飲んでみると意外にも飲みやすく(少し甘かった)、ぼくは瞬く間にその2合を空にして、もう1本頼んでいた。
「ねえ、キミ彼女いるの?」そのとき、突然彼女が訊いてきた。ぼくは何となく鮎川優菜の顔を思い浮かべていた。そういえば、鮎川とはあの日電車の中でばったりと会って以来ほとんど顔を会わせていないし、ひと言も言葉を交わしていなかった。まだ怒っているのだろう。なんとなく、久しぶりに話をしたいという思いがぼくの中に湧いてきた。
「あ、その顔はいるのね。」彼女の言葉でぼくは我に返った。
「いや、いませんね。彼女なんか。」
「彼女なんかって、女なんか大嫌いだって感じね。」冷やかすように言う彼女にぼくは少しムッとして言い返した。
「ホモなんかじゃないですよ。」唐沢の言葉がよみがえった。
「そんなこと思ってないわよ。でも、同性愛は別に悪い事じゃないと思う。」
「別にホモが悪いって言ってるわけじゃない。ただぼくは違うって言っただけです。」
「だったら良いけど。そんなにムキにならなくてもいいんじゃない。」
「ムキになんかなってない。」つい声が大きくなってしまったようで、次の料理を運んできたウェイターが思わず足を止めてぼくたちの様子を窺うように眺めていた。ぼくは一つ咳払いをして、グラスの中の紹興酒を飲み干した。
「なんかキミを見てるとね、」彼女はそれまでより声を落として言った。「ほうっておけなくなるのよ。」
「それはぼくが子供だって言いたいんでしょ。」
「ほら、すぐそうやってムキになる。そういうところが何だかハラハラさせられるの。」そう言って彼女はぼくの顔をじっと見つめていた。ぼくは思わず視線をはずし、誤魔化すようにグラスの紹興酒をあおった。
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by ktaro1414 | 2007-03-20 16:41 | STORY

小説42

 彼女の言うとおり、中華レストランは営業しており、チャイナドレスを着たウェイトレスがぼくたちを奥の個室へと案内してくれた。彼女がメニューを見ながら飲み物は何にするかとだけ訊き、ぼくはビールとだけ応え、そして彼女がウェイターにビールを2つと何かのコースをオーダーした。ぼくはウェイターが出て行くのを待って言った。
「中華のコースなんて、2人じゃ食べ切れませんよ。2皿も食べたらパンクです。」
「大丈夫。ここは一品一品を少なめにしたコースがあるの。だから2人でもひと通りの種類が食べられるってわけ。」たぶん、あなたがいつも行っている中華屋さんとは違うのよ、というフレーズがぼくの耳では聞き取れない周波数で続けられていたに違いない。
 しばらくして、前菜が運ばれてきた。ぼくはそれまでに2本のビールを飲み、彼女も1本目のビールが無くなったところでメニューを見ながら次は何にするか考えているようだった。
「キミは何にする?」ぼくはビールでいいと応えた。彼女は頷くような仕草を見せ、メニューを指さしながらオーダーした。そして、ぼくのところにビールが、彼女には赤ワインのフルボトルが運ばれてきた。コース料理は順調に進んでいき、彼女のボトルも快調に減っていっていた。
「よく赤ワインで中華が食えますね。」少し呆れたように言った。
「あら、結構合うのよ。中華と赤ワイン。」試してみる、という風にぼくの方にグラスをかざしながら言う彼女に、ぼくは首を振って応えた。
「ぼくは紹興酒にします。」
「へぇ、紹興酒なんて飲むのね。」そう言いながら彼女がウェイターを呼び、紹興酒を頼んでくれた。ウェイターに飲み方はどうするかと訊かれ、任せますと応えた。紹興酒なんて飲んだこともないのに、飲み方なんてわかるはずもない。
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by ktaro1414 | 2007-03-07 08:49 | STORY