小説68
2007年 10月 22日
それから数日間があっという間に過ぎた。その間、キャンパスで鮎川優菜と会うこともなかった。ぼくは心の中でたぶん彼女にバッタリと会うことを期待し、そして弁解する機会を欲していたのだと思う。しかし、ぼくは彼女の彼氏ではないし、もちろん彼女がぼくの恋人であるわけはなく、言い訳をする必要もなければ、言い訳のしようもないことははっきりしていた。それでもぼくはその機会を待っていた。要するに、ぼくは彼女に会いたかったのだ(たとえそれがどんなに身勝手なことだとわかっていても)。ぼくは出来るだけ何も考えないようにし、バイト中は来るお客様のことだけを考え、講義中は作詞に集中し、出来るだけ一生懸命に食事を食べ、友人といるときはなるだけ楽しい話題を探して、風呂に入っているときは意味もなく数を数えたりした。それでも何かの拍子に鮎川優菜の顔が浮かぶと、あの日あそこに泊まったことを悔やんだり、あの日の二人に祝福なんか送るんじゃなかったなどと意味のないことを考えたりした。
by ktaro1414
| 2007-10-22 18:15
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