小説32
2006年 12月 25日
ぼくたちの入ったバーには名前がない。あるいは名前が『バー』なのかもしれない。入口のドアに下げられた木製の看板には、カタカナで『バー』とだけ書かれている。店内は、7人が座れるカウンターと、4人掛けのテーブルがひとつあるだけで、さっきの店の名前はこちらに付けた方が相応しいんじゃないかと思うほどこぢんまりとした店だ。ぼくたちは、そのカウンターの一番奥の席に座った。
「マスター、ハーパーをハーフロックで。えっと、何にする?」
彼女はメニューを覗き込みながらどれにするか迷っていた。
「カシスソーダ?」ぼくが訊くと、彼女は顔を上げてぼくの方をじっと見た。
「だって、さっきのカシスソーダがおいしくなかったみたいだから。大丈夫、ここのはおいしいよ。ね、マスター。」
マスターは何も言わず微笑っていた。
「やだ、そんなにチェックしてたんですか?」
「だから、見えるんだって。正面だから。」
そして、ぼくたちはハーパーとカシスソーダでもう一度乾杯した。
「マスター、ハーパーをハーフロックで。えっと、何にする?」
彼女はメニューを覗き込みながらどれにするか迷っていた。
「カシスソーダ?」ぼくが訊くと、彼女は顔を上げてぼくの方をじっと見た。
「だって、さっきのカシスソーダがおいしくなかったみたいだから。大丈夫、ここのはおいしいよ。ね、マスター。」
マスターは何も言わず微笑っていた。
「やだ、そんなにチェックしてたんですか?」
「だから、見えるんだって。正面だから。」
そして、ぼくたちはハーパーとカシスソーダでもう一度乾杯した。
by ktaro1414
| 2006-12-25 18:04
| STORY